教授のつぶやき

All I really need to know, I learn in kindergarden  昔を語るようで今を語る。 過去を曖昧にしてきたから今がある。 繰り返さない為には記録しておくことだ。

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法律論文としての解説①

 BBSやXの会話で、複数人で議論している時に、新人達が入ってきて既に結論がでている話題を、持ち出し話し始めることに、皆さんはフラストレーションを感じた経験はないですか?
暫く発言を控え、今までの議論の経緯を頭に入れてから議論に参加して欲しいと思わなかったですか?(こんな時には日本では「しばらくROMってろ」と注意します。ROM=read only memory)。
5人の歴史家と中国の支持BCMwebmSC1 (1)
その新人達(シニアもいますが)にとっては会話の文脈を理解していない為、的を得ない話でも違和感を感じることはなく、もっともな事を言っていると映ります。興味深い事ですが、新人達の反論の内容によって、その人の知識レベルと意図が分析できたました(後日の記事で)
丁度、トラックを走る中距離走選手をスタジアムの上段から見ている人は、その選手達が周回遅れだと分かるのですが、間近で見ている人は、先頭を争っている選手に見えるのと同じ様なことが起こっていました。

もう一度、ラムザイヤー論文の構成を見てみます。
(↓追記read moreに、実際の論文の目次と文字数(赤字)を示し、概観出来る様にしました)

時代:江戸後期~終戦まで
対象:日本(内地、朝鮮半島と占領地)の売春婦システム
構成:次の二つの部分から成っていると見る(敢えて経済と法の2つの側面から眺めてみた)
①売春システムの時代背景(統計データと逸話…)は、分量的(文字数的)には3/4を占める
 経済的な信じられるコミットメント (credible commitments)の立証をしている
規則(マレー軍監令)とその適用例(米軍捕虜尋問調書N.49、文玉珠の手記、朝鮮人帳場人の日記)規則があるからといって、適用の状況守は別物。適用例として敢えて日本語以外の一次資料を選択した。この一次資料は何れも1943年前後のビルマでの出来事。場所的、時間的に同じなのは偶然ではない。(文字数分量としては7%ほど)
結論:慰安婦契約は信じられるコミットメント。
(参考)
記事 経済論文としての解説①の追記部分

論文の構成比からは、法関係の目を引く引用文献はマレー軍監令しかない理由は、これが主に経済分野に関する論文だからです。
過去に法制度に依存しない契約の自律的強制(self-enforcement) (=協力)の構造を理論的に検討したことがあり、芸妓契約(慰安婦契約)を例に実証的な研究をおこなった訳です。
法ルール(マレー軍監令)の影響が大きくなくとも、契約は協力関係(雇主と慰安婦はWin-Winの関係にある)で在り得る。
但し、それでは人文社会系(歴史学)の人達にとって馴染みのない概念ですので、敢えて朝鮮人慰安婦の、南方の、1943年前後のナラティブでない一次資料を選んで論文の引用文献としたのです。
文献は、日本の関心者の間では、ポピュラーな物ばかりで、既にネット上で何度も議論になっている資料から選択してあります。
次回の記事で上述の3つの実例を使ってマレー軍監令の施行の状況を説明します。

(参考)
カイカイchは、韓国のネット掲示板翻訳サイト「カイカイ反応通信」から派生した日韓交流掲示板サイトです。
多言語対応ですので、英語、フランス語や中国語...のどんな言語でも参加できます。時間のある時に覗いてみることをお勧めします。
比較的最近(2016年から)のBBSですがキーワード”慰安婦”でスレ検索すると1947件がヒットします。
https://kaikai.ch/search/慰安婦/page:39
『慰安婦』スレッド一覧(作成順) - 39ページ目|カイカイch - 日韓交流掲示板サイト

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↓ラムザイヤー論文を俯瞰する


ラムザイヤー論文 Contracting for sex in the Pacific War

以下は論文の目次です。各章、項の末尾のカッコ内の赤数字がワード数です
論文の全ワード数は9403字でした。分量的には社会背景(統計データ、逸話)の解説が多くを占めます。
例えばこんな記述です。
2.3. Prostitution in Korea

1,789 Japanese licensed prostitutes worked in Korea but only 1,262 Koreans. The Japanese prostitutes entertained 450,300 guests, where the Koreans entertained 110,700 (252 guests per year for the Japanese prostitute, 88 for the Korean). By 1935 the number of Japanese licensed prostitutes had fallen to 1,778 but the number of Koreans still had risen only to 1,330 (Kim and Kim 2018: 18, 21; Fujinaga, 2004).

2.3. 韓国の売春婦
1,789人の日本人の公娼が韓国で働いていたのに対し、韓国人は1,262人だけだった。 日本人売春婦は45万300人の客を接待したが、朝鮮人売春婦は11万700人をもてなした(日本人売春婦は年間252人、韓国人は88人)。 1935年までに日本の公娼の数は1,778人に減少したが、朝鮮人の数は依然として1,330人にとどまった(Kim and Kim 2018: 18, 21; Fujinaga, 2004)。
これは朝鮮半島は私娼が圧倒的に多かった事を示す資料の説明です。こんな統計データの説明が続きます。これは朝鮮半島の実態(未公認売春宿で働かされていた売春婦が大半だった)。誰にとっても読まれるインセンティブが無さそうですが、重要な数字なのです


1. Introduction(1030)
a b s t r a c t
2. Prostitution in Prewar Japan and Korea(4180)
2.1. Introduction(274)
2.2. Japan(2395)
1. Licensed prostitutes
2. The contractual logic
3. Unlicensed prostitutes
4. Karayuki(638)
2.3. Prostitution in Korea(838)
1. The phenomenon.
2. The contracts.
3. Korean prostitution abroad.
2.4. Recruitment in Japan and Korea(673)
1. Japan.
2. Korea.
3. The comfort stations(1892)
3.1. Venereal disease
3.2. Contract duration
3.3. Contract prices
3.4. Contract terms(マレー軍監令、米軍捕虜尋問調書、朝鮮人帳場人の日記)
3.5. Prostitute savings(文玉珠の手記:ビルマ戦線 楯師団の「慰安婦」だった私、千田佳子の自由廃業の記述)
3.6. The closing years of the war
4. Conclusion(664)
 一言結論:慰安婦契約は信じられるコミットメントである
References about 80(1637)

結論:
The contracts themselves followed basic game theoretic principles of credible ¨ commitments.Brothel ¨ owners (not the military) hired the bulk of the new prostitutes, and hired most of them from Japan and Korea. Realizing the incentive brothel owners had to exaggerate their future earnings, women wanted a large portion of their pay upfront. Brothels agreed. Knowing that they were headed for the front, women wanted a maximum service length. Brothels agreed. In turn, realizing the incentive the women had to shirk within their unmonitored quarters, the brothels wanted terms that gave women an incentive to work hard. The women agreed. Together, the women and brothels concluded indenture contracts that coupled a large advance with one or two year terms. Until the last months of the war, the women served their terms or paid off their debts early, and returned home.
契約自体は、信頼できる約束という基本的なゲーム理論の原則に従っていた。売春宿のオーナー(軍ではない)は、新しい売春婦の大部分を雇用し、そのほとんどは日本と韓国から雇用した。 売春宿のオーナーが将来の収入を誇張しなければならないというインセンティブを認識した女性たちは、給料の大部分を前払いすることを望んだ。 売春宿も同意した。 自分たちが前線に向かうことを知っていた女性たちは、最大限の勤務期間を望んだ。 売春宿も同意した。 次に、女性たちが持っていたインセンティブに気づきました。
売春宿は監視のない部屋で身を隠すために、女性に一生懸命働く動機を与える条件を求めた。 女性たちは同意した。 女性と売春宿は一緒に、1年か2年の任期と多額の前払いを組み合わせた年季奉公契約を締結した。 戦争の最後の数カ月まで、女性たちは任期を終えるか、借金を早期に返済して帰国した。

*千田佳子: But when Senda (1973: 26-27) asked him, "were there any women who actually paid back the 1,000 yen [advance] and went free?," "oh, there were," he replied. "There were lots. Among the ones who went with the first regiment, even those who were slowest paid it off in a few months and went free."
しかし、千田 (1973: 26-27) が「実際に 1,000 円を返して自由になった女性はいたのか?」と尋ねると、「ああ、いたよ」と彼は答えた。 「たくさんいました。最初の連隊に同行した人たちの中では、最も遅かった人たちも数か月で返済を終えて自由の身になりました。」
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